尿もれ治療の種類と選び方について解説!
尿もれの種類とその特徴
尿もれ(尿失禁)は、多くの人が経験する症状であり、その種類によって原因や改善方法が異なります。
主に「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」の4つに分類されます。
それぞれの特徴を理解することで、適切な治療法を選ぶことができます。
以下で詳しく解説します。
腹圧性尿失禁とは?特徴と原因
腹圧性尿失禁は、咳やくしゃみ、大笑い、重い物を持ち上げるなど、お腹に力が入ったときに尿が漏れる状態です。
骨盤底筋群の緩みや尿道括約筋の機能低下が主な原因とされています。
妊娠・出産や加齢、肥満がリスク要因であり、女性に多く見られます。
切迫性尿失禁の症状とメカニズム
切迫性尿失禁は、突然強い尿意を感じ、トイレに間に合わずに尿が漏れてしまう状態です。
膀胱の過活動が主な原因とされ、神経の異常や加齢が関係する場合があります。
症状としては頻尿や夜間頻尿を伴うことが多いです。
溢流性尿失禁の主な原因と対策
溢流性尿失禁は、膀胱に尿が溜まりすぎた結果、少しずつ漏れ出す状態を指します。
尿が正常に排出されないため、膀胱が限界を超えて溢れ出ることが原因です。
前立腺肥大症や尿路の閉塞、神経疾患などが主な原因です。
対策として、原因疾患の治療や自己導尿が行われます。
機能性尿失禁の原因と改善策
機能性尿失禁は、排尿機能自体に問題がないにもかかわらず、身体的または認知的な理由でトイレに間に合わず尿が漏れる状態です。
高齢者や認知症患者に多く見られます。
トイレへのアクセスの難しさや衣服の着脱が原因となる場合もあります。
尿失禁は種類ごとに異なる原因と特徴を持ち、それぞれに適した治療が必要です。
自身の症状を正しく把握し、早めに専門医に相談することが解決への第一歩となります。
尿もれの主な治療法
尿もれ(尿失禁)の治療法は、症状の種類や重症度、患者のライフスタイルなどに応じて選択されます。
保存的療法から手術療法、最近では非侵襲的な治療法も登場し、多様な選択肢が提供されています。
それぞれの治療法について詳しく解説していきます。
保存的療法:骨盤底筋トレーニングと生活習慣の改善
軽度から中等度の尿もれに対しては、保存的療法が効果的です。
- 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)
骨盤底筋を鍛えることで、尿道括約筋を強化し、尿もれを防ぎます。
日常的に行える簡単な運動であり、長期的な改善が期待されます。 - 生活習慣の改善
適切な体重管理や飲水量の調整、利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取制限などを行います。
手術療法:TVT手術やTOT手術の選び方
手術療法は、保存的療法や薬物療法では改善が難しい中等度から重度の腹圧性尿失禁に対して選択される治療法です。
中でも広く行われているのが「TVT手術(経膣テープ手術)」と「TOT手術(経閉鎖孔テープ手術)」です。
TVT手術は、尿道の下に特殊なテープを挿入し、尿道を支えることで尿もれを防ぐ方法です。
テープは安全なポリプロピレン素材で作られており、体内にしっかりと固定されます。
手術時間は短く、一般的に1時間程度で終了します。
術後の回復も早く、1~2日間の入院で日常生活に復帰できることが多いのが魅力です。
軽度から中等度の腹圧性尿失禁に適しており、多くの患者に効果的な治療法とされています。
ただし、テープの張り具合が調整されるため、まれに緩みや排尿困難が生じる場合もあります。
一方、TOT手術は、テープを尿道の下から太ももの内側の閉鎖孔に向けて通す方法です。
この経路を取ることで、骨盤底筋に自然なサポートを提供し、尿道への圧力を分散させます。
中等度から重度の腹圧性尿失禁に適しており、TVT手術が難しい症例でも選択されることがあります。
術後の合併症リスクが低いとされ、長期的な安定性が特徴です。
ただし、太ももの内側に一時的な違和感を感じることがあるものの、多くは時間の経過とともに改善します。
非侵襲的療法 : インティマレーザー ,スターフォーマープロ
非侵襲的療法は、手術を伴わず、身体への負担が少ない治療法として注目を集めています。
尿もれに悩む患者の中には、手術に対する不安やダウンタイムを避けたいと考える方も多く、これらの方法は、そうしたニーズに応える選択肢です。
ここでは、「インティマレーザー」「スターフォーマープロ」2つの治療法について詳しく解説します。
インティマレーザーは、膣内にレーザーを照射することでコラーゲン生成を促進し、尿道や膣壁の支持力を高める治療法です。
この方法は、痛みが少なく、施術時間は約20分程度で完了します。
主に軽度から中等度の腹圧性尿失禁に適しており、施術後すぐに日常生活へ戻れることが大きなメリットです。
スターフォーマープロは、電磁波を利用して骨盤底筋を刺激し、筋力を強化する非侵襲的な治療機器です。
患者は専用の椅子に座るだけで施術が可能で、1回30分程度の短時間で効果が期待できます。
この治療は、軽度の腹圧性尿失禁だけでなく、骨盤底筋の機能低下に伴う不快感を改善する目的でも使用されます。
施術中に痛みを感じることはなく、リラックスして受けられる点が特徴です。
尿もれ治療を受ける際の注意点
尿もれの治療を成功させるためには、症状のタイプや重症度に合った適切な治療法を選ぶことが重要です。
また、治療を始める前に、自身の生活習慣や希望に応じたアプローチを検討することも大切です。
医師としっかり相談し、自分に最適な治療計画を立てることで、効果的な改善が期待できます。以下に、治療法を選ぶ際のポイントを解説します。
症状に合わせた治療法の選び方
尿もれは「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「溢流性尿失禁」「機能性尿失禁」などに分類され、それぞれ異なる原因があります。
そのため、治療法の選択には、正確な診断が重要です。
軽度から中等度の症状には、骨盤底筋トレーニングや生活習慣の改善が適しています。
一方、保存的療法で効果が得られない場合は、手術療法や非侵襲的療法が効果的です。
治療法の選択には、患者自身の希望やライフスタイルも考慮されます。たとえば、ダウンタイムが取れない場合は、比較的負担の少ない非侵襲的療法が適しているかもしれません。
重要なのは、医師とのコミュニケーションを通じて、不安や疑問を解消しながら進めることです。
まとめ
尿もれは、適切な治療を受けることで大幅に改善が期待できる症状です。
症状のタイプや重症度に応じた治療法を選択し、医師と連携して治療を進めることが重要です。
保存的療法や手術療法、非侵襲的療法など、多様な選択肢があるため、自分のライフスタイルや希望に合った方法を見つけることができます。
早めの診断と治療が、快適な生活を取り戻す第一歩です。
尿もれに悩んでいる場合は、恥ずかしがらずに相談し、自分に合った治療法を見つけてください。

記事監修医師プロフィール
院長/形成外科専門医・医学博士
伊藤 蘭
2003年 | 山口大学医学部卒業 |
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2003年 | 京都大学医学部附属病院形成外科 日本赤十字社和歌山医療センター形成外科 |
2006年 | 島根県立中央病院 形成外科 |
2008年 | 松寿会共和病院 形成外科 |
2010年 | 京都大学大学院医学研究科課程博士(形成外科学)入学 |
2012年 ~2014年 | MD Anderson Cancer Center, Houston, USA. (Microsurgery Research Fellow) |
2014年 | Chang Gung Memorial Hospital, Taiwan(Microsurgery Fellow) |
2014年 | 京都大学大学院医学研究科課程博士(形成外科学)博士課程 所定の単位修得および研修指導認定 |
2015年 | 京都大学医学部附属病院形成外科 助教 |
2017年 | 城本クリニック京都院 院長 |
2020年 | ピュアメディカル西大寺院 院長 |
2021年 | くみこクリニック四条烏丸院 院長 |
2022年 | いとうらんクリニック四条烏丸開設 |